やぎポエム

ポエムとついてますがブログです。編集・ライターの林雄司のブログです。

会社の本質

最近、出社するようにしている。

デスクでパソコン開いているのも会社っぽいし、斜め向かいに同僚がいるのも会社っぽい。ドラマのようだ。

 

そこに通りかかった社長が「西郷輝彦、死んだんだって」と話しかけてきた。「最近テレビで見た気がするけど」「御三家だよ」「僕はヒデキのほうですね」みたいなことを話してすぐに会話は終わった。

………。

あ、会社だ。

偉い人とどうでもいいことをちょっとだけ話すこの感じ。会社だ。

 

斜め向かいの同僚も「……いま、すごく会社っぽくなかったですか?」と言ってきた。

 

コロナで止まっていた時間が再び動き始めた感覚をどうでもいいことで感じてしまった。

鎌倉殿の13かつら

いま、NHKの大河ドラマをネットで見ることができる。

20年前、デイリーポータルZを始めたときとはネットで見られるコンテンツが全く違う。量が圧倒的に増えているし、質も素晴らしい。

よくそこで生きながらえているなと思う。

デイリーポータルZの動画コーナーのギャラは安い。たぶん大河ドラマのかつらレンタル代より安い。もし大河ドラマがその予算だったら1時間ずっとかつらだけを映す番組になるだろう(カメラマンの費用は考えないものとします)。

鎌倉殿の13人はかつら13個だ。

もちろんロケバスの運転手の日当よりも安い。王様のブランチがデイリーの予算だと、タレントなしでロケバスの運転手が最新スイーツを食べる番組になる。

どっちもたとえ話で書いてみたのに、ちょっと見たくなっている(撮りたい)。

それが生きながらえている理由かもしれない。

日本でいちばん影が薄い島

新宿西口の地下街にある中部地方の観光案内所の英語表記は Central Honshu Information Plazaである。

セントラル本州。

北海道や九州は意識するが「本州」という島は意識したことがないので新鮮である。本州生まれ本州育ち、ずっと本州で暮らしているのに。

世間的にも"I love 本州"Tシャツを見たことがないし、「本州フェア」もデパートでやってない。「そうだ、本州行こう」のキャンペーンもない(京都も本州だからこれでもいいはずだ)。

日本でいちばん影が薄い島かもしれない。本州。

モデムの音が金魚売り

SpotifyでIndie Rockなどのプレイストをよく聴いている(インディペンデントレーベルのアーティストだと思うがよく分かってない)。

90年代っぽい楽曲でふたつ、モデムの音が使われているのがあった。

www.youtube.com

↑これの0:50あたり

こっちの曲はいきなりモデムの音だ。

どちらも90年代から活動している人じゃなくて、若者が敢えて90年代っぽくしているのだと思う。

90年代が懐かしい対象になって、聞き覚えのある音が「懐かしの金魚売りの声」みたいな扱いになってきている。

 

ちなみにリアル90年代、モデムでパソコン通信のセンターにつなぐつもりが人んちにかけたことがある。モデムから「もしもーし、なんだこれ?(怒)」という声が聞こえた。

ネットの先には人がいる、を肌で知った瞬間である。ただの間違い電話だけど。

高いところ好き

渋谷のスクランブルスクエアに展望台がある。

 

そこが年間パスポートを発売したのだ。年間5,400円。1回1,800円だから3回分である。発売開始の4月1日に買って、もう4回ぐらい登った。

 

いまのところ毎回発見がある。

 

たとえばビルだらけの渋谷の一角に低いエリアがある。

写真だと分かりにくいので色分けするとここ。

松濤だった。

低い建物が集まっているので下町かと思ったら超お屋敷街だった。用途地図を見ても松濤だけ低層になっている。

緑が低層住宅地域。用途地図がそのまま景色になっている。(渋谷区地図情報システム から引用  )静かに興奮した。

 

駒沢のあたりのマンションはみな北側が削られていた。

調べたら北隣の家が影にならないように削る法律があるのだそうだ。削った部分の部屋はルーフバルコニーつき!ってことになるんだろう(でも北側)。

 

写真の撮りかたにも凝りはじめた。床に三脚を置いて上から顔を出すと

夜景を見下ろす写真になる。

 

ネクタイを締めているだけでお天気キャスターみが出る。

 

南ルートで羽田に着陸する飛行機。今度乗るときは屋上にいる人に手を振ってもらおう。

上から見る三千里薬品。甘栗屋は見えなかった。

 

屋上に鏡があって、若者たちが鏡に向かって写真を撮っている。すると景色を背景にした写真が撮れるのだ。

デジタルサイネージとかじゃなくて、鏡という枯れた技術が大人気なのがおもしろい。

 

妻と撮ったらヤンキー写真になってしまった。

コールドスリープ悪代官

タイムリープ、コールドスリープ、異世界転生がSFじゃない作品にもしれっと登場する。
誰も体験したことがないのに共通認識になっている。
って思ったけどゾンビも悪代官もそうだった。本物を見たことない。

フィクションって自由じゃなくてフィクションの世界のルールがしっかりあるのかもしれない。
 
だから「悪代官がコールドスリープから目覚めてゾンビと戦う物語」って適当に書いても理解できる。フィクションのルールは便利だ。

フィクションのルールを使わずに書こうとすると「半分地面に埋まってる山田がビルを吸う一昨年」みたいになってしまうし(ちょっとルールを使っている気もする)、コールドスリープ悪代官よりも書くのが難しい。魅力もない。

うっかりハネムーン

このまえ、記事の撮影をしていたら自転車で空き缶を運んでいるおじさんがいた。

大量の空き缶をビニール袋に入れて自転車の荷台に乗せている。

そして袋が荷台からずり落ちて地面に落ちた。

でも、そのまま自転車で走るから、

カラカラカラカラ

映画で見るハネムーンみたいになっていた。

 

ハネムーンの音をはじめて聞いたのはハネムーンそのものではなく、うっかりハネムーンみたいになっている人だった。

 

「うっかりハネムーンみたいになる」ということが世の中にはあるのだ。