キャップを逆にかぶらない人生だった。
そもそもキャップをあまりかぶらないし、ましてや逆さにかぶろうとしたこともない。つまり、スポーティーでもないし、やんちゃに見せようとしたこともない。
居酒屋で隣のテーブルに座ったキャップ逆さ男が話をしているのを見てそう思った。平行世界でもおれは彼ではないだろう。
以前は肘当てがついているツイードのジャケットを着ている人を見るとそう思ったのだが、徐々に着そうな気がしている。
キャップを逆にかぶる人生、軌道が交わらない遠い星のようだ。でも、いつかそうする日が来るのだろうか。